君とぎくしゃくしたい

「…無いな」 浮竹は箪笥の中を探っていた手を止める。気に入って使っていた手拭いが見当たらず、暫く部屋の箪笥を漁っていたのだ。元々私物は少ないから、何度も同じ場所を探したところで無駄だと分かっているのだが。 数年前に街でふと見かけた手拭いで、白地に麻の葉文様が藍色で染め抜かれたよくある柄なのだが、何より吸水性が良かった。それを気に入って買い足し、計三枚所持しているはずだったのだが、うち一枚が見当たらない。 主に隊舎の風呂を使用する際にしか持ち出さなかったから、考えられるとすれば風呂場だろうか。昨日は残務処理が長引いた為屋敷へ帰らず、夜更けに隊の風呂を使ったのだがその時に置いてきてしまっただろうか。 と言っても、昨晩使用した手拭いは既に一枚、昼前に下着と共に洗濯から戻ってきているから、その推測もおかしな話なのだ。もしや昨晩は二枚重ねて持って行き、うち一枚を置いてきてしまった可能性がある。 この手拭いは八つ折りにしても薄いから、重ねてもそう手応えが無いのだ。昨晩は疲れ切っていた事もあって、気づかなかったのだろう。十分に考えうる状況であった。 ぱたんと箪笥の引き出しを閉め、ならばと部屋を出る。 丁度清掃の時間が過ぎたか過ぎないかの時間で、もし見当たらなければ、忘れ物を改めて今週の清掃当番に聞けば良い。そろそろ昼食でも取ろうかというような時間帯であったから、ついでに覗くくらいの気持ちであった。 隊舎には複数の浴場があり、男女別の大浴場、そして主に席官以上が使用する男女別の個室浴場である。浮竹自身はさっさと済ませたい事が多いため大浴場を使用してばかりで特段拘りは無かったのだが、昨夜は疲れ果て長風呂の気分だった為個室浴場を使用していた。 十人以上が一度に入っても余裕のある広い湯船も良いが、一人で時間も周りも気にせずに過ごすこぢんまりとした浴槽も良い。あまりに良い湯でうつらうつらとしてしまい、危うく上せかけたくらいだ。 大浴場と個室浴場は風通しの良い隊舎の西に有り、主に任務からの帰還が多くなる夕方、夜警の帰還時刻となる朝方に混み合う。昼時は丁度使用するものもほぼ居ない為、週替りで回している清掃当番が浴室の床をたわしで擦る音が聞こえる。 浮竹は清掃中と張り紙の張られた大浴場の入口を過ぎた。個室の清掃は未だ手を付けられていないようだ。更に女性用の個室浴場を過ぎ、男性用が二つ並ぶうち手前の扉の前へと立ち手をかける。 僅かに開いた隙間から、むっと湿気が漏れた。更になにやら湯を流すような音もする。おや、と浮竹は首を傾げた。この漏れる熱気からすると清掃中という訳ではなく、恐らく誰かしらが使用しているのだろう。個室浴場は内鍵が掛けられるのだが、うっかり忘れているらしい。 だがこんな時間に珍しい。仕方ない、出直すかと一旦踵を返しかけたが、折角はるばる西側までやってきたのだ。忘れ物の手拭いを探すだけだと、一度は閉じた引き戸を浮竹はまるで忍び込むかのようにそっと再び開けた。 纏わりつく湿気を全身に感じながら、浮竹は狭い脱衣所を見回す。洗面台、脱衣籠、ごみ箱と見回すが手拭いは見当たらない。他の衣服に巻き込み仕舞った可能性もある。 念の為清掃当番にも後で聞いてみようか。だが、手拭い一枚そう高価なものでもない。また買い直しても良いかとぼんやり顎を擦りながら考えていれば、背後でがらりと戸を開く音がした。 まずい、と浮竹は自然と背筋を伸ばす。いくら相手が同性とはいえ、忍び込んだことは気まずい。ひたひたと水を含んだ足音を背に、まだ相手もわからぬまま、悪い、と頭を下げ控えめに振り返った。 「邪魔をして悪い、ちょっとした探しも、…の…を……」 目に入った姿に、浮竹は思わず口をぽかんと開けたまま呆然とした。へ、と情けない声が漏れる。 「っな…たっ、隊長…！？なっ、なんで！？」 「…な、ん…で！？…な、なんでは此方の台詞だ！」 あまりの動揺に声が裏返る。濡れた白い肌と緩やかな曲線を、生まれたままの姿で見せるは暫く目を丸くして固まっていたが、一拍置いてようやく状況を理解できたのかくるりと背を向けたのと同時に、浮竹も正面へと顔を戻した。 どういう事だ、と混乱をしつつも浮竹は咄嗟に内鍵を掛けた。この状況に更に第三者を加わらせる訳には行かない。余計に訳がわらなくなる、その上まさか彼女の裸体を他人へ見せる訳には行かない。 しかし此処は間違いなく男性用の筈だった。目に焼き付いて離れない彼女の白い肌を必死に記憶から振り払いながら、せめて冷静を得ようと状況を整理する。が、隊長、と背後からか細い声で呼ばれ、身体が思考とともにびくりと固まった。恐る恐る僅かに振り返ると、肩を竦め胸元と下半身を腕や手で隠すようにしたまま、手拭いを、と申し訳無さそうには続ける。 ああそうか。気が利かない事を反省しながら顔を再び正面へと向ける。彼女に指示される通り、脱衣籠に入った白い手拭いを取り後ろ手に渡たすと、すみません、と消えそうな声が聞こえ、一つ溜息を吐いた。 「どうして男性用を使用しているんだ…」 「そ、その…女性用が大浴場も含めて、全て清掃中だったので…さっと浴びるだけだし良いかなと…」 「……鍵も掛かっていなかったよ。もし誰かが…こうして入ってきたらどうしていたんだ」 流石にうっかりでは済まされないよ。どうにも収まりがつかずため息混じりに続ければ、すみません、とまた小さく彼女の声が耳に入る。説教をしたい訳ではないのだが、もしもを思うとどうにも小言を零さずには居られない。 不用心すぎるのだ。直ぐに上がるから男性用を使うとか、挙句の果てに内鍵を掛け忘れるとか。普段の楚々とした佇まいと反面、そうそそっかしかったり迂闊な部分が時々見えるところもまた、彼女の魅力の一つであったが、しかしこのような場面では求めていない。 今日は、と、再び口を開いた彼女は、何やらぽつぽつと語り出す。浮竹はその消えそうな声へ耳を傾ける。どうやら午前中の仕事が早めに一段落したは、朽木から誘われ裏の訓練場で稽古をしていたのだという。 今日は天気も良く、よく汗をかいたのだろう。さっと風呂を浴びようかと思い訪れた後は、彼女が先程か細く語った通り、空いている男性用の個室浴場を拝借したと。朽木はどうしたのかと聞けば、彼女はあまり隊の風呂場が好みではないようで、自宅の屋敷へ一時的に帰ったらしい。 成程、事の次第は理解した。一通り話を聞き頷いていれば、じゃあ隊長は、とは切り返す。いざ聞かれれば多少気まずいものの、素直に事の顛末を手短に伝えた。気に入っている手拭いを探すだけと、忍び込んだ。浮竹もまたと同じように一瞬のつもりであったのだが。 何も女性用風呂を覗くようなつもりで来たわけではない。現に此処は男性用の浴場である。様々な偶然が重なってしまった事には違いなかった。が、彼女の過失と油断が八割ほどとは思うのだが。 しかし、何度も言うようだがここは男性用の浴場である。まさかこのような状況を想定できるはずが無い。湯気を纏っていた薄っすら赤みを帯びた滑らかな肌、無防備に顕になった胸元と緩やかな膨らみの記憶がしつこく蘇り、耳が熱くなる。 何も、初めてその裸体を目にしたという訳では無いのだ。だが、こう白昼堂々と、太陽光が明るく格子窓から差し込む中で、一瞬でもまじまじと見つめてしまった彼女の肌の、思わぬ艶めかしさに動揺した。 普段は、行灯の仄かな光源が辿り着くか分からないほどの薄暗闇で眺め、触れるばかりである。だからだろう、この状況に罪悪感を覚えながらも、感情が異様な揺れ方をしたのだ。 「…気をつけるように」 「すみません…でも、隊長で良かったです」 「よ…くない。…いや、悪くはないが、良くはない…」 ああ、まずい。と、浮竹は背後のが脱衣所へと上がりかけたひたり、という足音を聞き咄嗟に扉へと右手をかけた。邪魔をしたね、そう至って普段どおりの声音を気取る。 背に纏った熱を感じるのだ。彼女が湯船でその肌に蓄えた熱がこの狭い脱衣所の中で近づきまた動揺した。真っ昼間から隊舎で覚えるような感情ではない。戸を引いてもがたがたと開かず、内鍵を掛けていた事を思い出し鍵へ手をかけた。 「っちょ、ちょっと、隊長…待って！」 「何だ、まだ何か…」 人が、との小さな悲鳴と共に、左の腕を勢いよく引かれた。湿った床の上で思わぬ方向から引く力に体勢が崩れ、彼女の居る方向へと滑るように倒れ込む。 二人して重心を失い、仰向けに倒れようとする彼女の背と頭を、咄嗟に守るよう腕を回し抱え込む。まずい、とこの先の展開が容易に想像できながらも、この狭さで体勢を立て直すのは難しく、結局洗い場の床へ、鈍い音を立てて転がった。 せめて、彼女を抱えたまま仰向けに倒れられたのは幸いだった。 「…す、みません……」 「い、いや、…平気だったか」 「私はこの通りですが、隊長こそ背中を…」 僅かに身体を起こした彼女に、良いんだよと笑う。背を軽く打ち付けはしたが、受け身が取れていたから大した痛みではない。代わりに羽織と死覇装にじわじわと水分が染み込む不快感はあるものの、一安心であった。 しかし、この状況はどうにもまずい。何やら扉の外がざわざわと騒がしいのだ。彼女が浮竹の手を引いてくれなければ、扉を開け放ち、この訳のわからない状況と彼女の裸体が白日の下に晒れる危機であった。 「…今日、昼過ぎに小椿さん達の小隊が任務から帰還予定だった筈で…」 「それで…この外の騒がしさか」 浮竹の身体の上で寝そべったまま、彼女は見上げるようにその頬を染めたまま黙って頷く。 まずい状況に関しては、この浴室においても同じであった。彼女の生身が身体の上へ乗り、その生々しい重みと身体の熱が衣服を通しても伝わる。柔らかい膨らみが胸元に押し付けられ、悶々とする思いは抑えられず、せめて落ち着かせようと細く長く息を吐いた。 早く彼女を身体の上から下ろしてしまえば良いというのに、しかしそういう気にはならなかった。ならなかった、というよりも、この状況を内心待っていたとでも言うべきだろうか。それは恐らく彼女も同じであって、僅かに身体を持ち上げ、熱っぽく見上げる視線が物語っている。 この状況が満更でもない事を、嫌というほど自覚していた。幸いにも此処は隊舎とはいえ密室である。光が差し込む窓には、磨り硝子が張られ直接この浴場の様子が見えることはない。 廊下は相変わらずがやがやと騒がしい様子だが、相反して余計に扉を一枚隔てたこの空間の異質さを明らかにするように思えた。 「…隊長、迷われてますか」 「迷っていると言ったら」 は答えず、その口元の笑みだけで返した。彼女はいつもそうだ、揺らいだ感情を何の躊躇いもなく、まるで指先で爪弾くように崩す。薄く色づいた唇の形よく上向いた口角が近付き、柔らかく触れれば保っていた理性をようやくそっと手放すことが出来た。 そこからは、順当な性交渉の手順を辿っていた。舌を交わらせ、そのぬるく柔らかく滑る心地を楽しみながら、浮竹は身体を起こす。流石に洗い場の床へ転がったままというのは気が乗らず、かといって彼女を床へ転がすわけにも行かない。 彼女の滑らかな肌の感触を楽しむように撫でながら抱え、徐々に体勢を立位へと持って行く。あまり試したことのない体勢であったものの、決して広いとは言え無いこの場所では致し方ない。 浴槽の縁へ手をついた彼女は、その臀部をおずおずと突き出す戸惑った様子に心臓がどくりと脈打つ。胸元に実った膨らみは、重力に従って僅かな身体の揺れに合わせ柔らかく震える。彼女を形作るその全ての曲線が愛しく、肩から胸元、脇腹から腰、薄い皮膚と肉の下の骨格を辿るように撫ぜた。 やがて尻の張りの良い肌を経て、その中心へと向かう。期待に彼女はちらちらと振り返り、だというのに、いざその蜜の漏れる場所へと触れればゆっくりと背をしならせぐったりと頭を垂れた。 肉厚な花弁を割り入るように二本の指を挿し込み、上側を甘く引っ掻くように指を曲げ出し入れを繰り返す。音が立たぬよう、しかし微かにくちゅりと漏れる水音が、掠れたような吐息と混ざり浴室に鈍く響く。 「…った、いちょう…」 「…どうした」 「ああ、いえ…その…き、きもちよくて…」 囁くような声でそう漏らした後、その腰を震わせる。じわりと滲む蜜を指先へ纏わせながら、もう一度同じ場所をしつこく攻め立てる。ぷっくりと腫れ上がった肉芽を同時に擦り上げながら、何度も往復を繰り返せば膝をがくがくと震わせ腰を落とした。 荒い呼吸をしながら、彼女はしゃがみ込み恨めしそうに浮竹を見上げる。声を出せないのを良いことに、意地悪をしすぎただろうか。その上目の視線にぞくぞくとしながら、腰紐を解き袴を下ろす。洗い場の床の水分を吸い込み、重くなったそれを脱衣所の方へと投げ込む。 下着から取り出した、欲に腫れ上がった雄を手に、滲み出した汁を伸ばすように何度か往復させた。恨めしそうな彼女の瞳は途端に揺れ、その視線はどこか切ない。、と微かに呼べば、何も言わずとも立ち上がり、再び湯船の縁へと手を付く。 差し出すように突き出した臀部を浮竹は掴み、ひたりひたりと湿った足音を立てながら一歩腰を寄せる。じわりとまた滲む汁を彼女の蜜と混ぜるように、その蜜口へと宛てがった。心地よい体温と、そのぬるりと滑り纏わりつく蜜を楽しみながらやがて体重を掛ける。 ゆっくりとその体内へと入り込みながら、押し返す肉壁の柔い締付けが堪らず、深い溜息を漏らした。背をしならせながら、まるでもっとと誘うように腰を高く上げる。浅く抽送を繰り返しながら、しかし徐々にその深度を増してゆくと一段ときつい圧迫感が迎える。 「っは、ぁっ…声、出ちゃ…」 「駄目だよ」 「ん、っン……」 廊下のこの騒がしさならば、多少声を漏らしたところで聞こえやしないだろう。しかし、あんまりに媚びるような声をやたら上げられては困る。彼女が唇を噛みながら振り返るから、まるで猫が毛を逆立てて怒る愛らしさに思わずふっと笑った。 「おーい」 その時、廊下から呼びかける声と共にがたがたと戸が揺れ、思わず息を潜めた。内鍵がそう簡単に破られることはないだろうが、しかしあまり良い状況とは言えない。戸を揺らしながら、おーい、と再び呼びかける声の主は仙太郎に違いなかった。 が先程言っていた事を思い出す。仙太郎の小隊が帰還したから廊下が騒がしくなったのだと。そうなればいずれ仙太郎が風呂を浴びに来る事は想像に容易かったはずなのだが。もう一つの男性用は他の席官が使用しているのか、もしくは清掃に入られているのだろうか。 「誰だ、ずっと入ってんのは。長えぞ」 流石に黙り続けている訳にはいかない。俺だよ、と返せばその声の主が浮竹であることに気付いたのか、焦ったような様子で、大丈夫ですか、具合が悪いんですかと仙太郎は叫びながら、再びがたがたと扉を揺らす。 このままでは扉を蹴破られかねないと、待て待てと制止する。がやがやと騒がしかったのは仙太郎の小隊が帰還した後、大浴場の清掃を待っての事だったのだろう。恐らくこの個室浴場だけが使用中のまま一向に開かない事に痺れを切らして声を掛けて来たのだろうが、実に申し訳ないことをした。 申し訳ないと思いながらも、しかし中断できるような状況でもない。僅かに振り向き浮竹の顔を焦ったような表情で見上げるに微笑みかければ、どういう訳か彼女の中がきゅうと締まり危うく声が漏れるところであった。 「具合が悪いってんなら、今から蹴破っちまいますが！」 「っち、違うんだ、今日は、その…長湯の気分でな」 「長湯……ああ、確かに今朝はお疲れのご様子で」 「そうなんだ、悪いがもう少し掛かりそうだから、…また出直してくれるか」 仙太郎は扉の向こう、二つ返事で承知する。具合が悪ければ呼んで下さい、と彼の真っ直ぐな言葉が普段は心底頼もしく嬉しいが、今はひたすら心苦しい。状況が状況とは言え、やはり嘘を吐くのは得手でなかった。 彼の気配が消えた後、浮竹はようやく張り詰めていた気を抜く。 唇を噛み、必死に声を漏らすまいとする彼女の背を見下ろしながら、再び緩やかな前後の動きを再開した。浴槽の縁へ手をついたは、腰を突き出すように高く上げ、浮竹の動きに合わせてぴくりと腿を震わせる。 その奥へと到達する度、彼女の身体はただでさえ窮屈だというのに更に窄まる。臀部の柔らかく張りのあるその双丘を支えるよう手で触れながら、中央へと飲み込まれる様子をぼうっと見下ろしていた。 みっちりと咥え込む彼女の花弁のその奥には熱い蜜が溢れ、抽送を繰り返す度に纏わりつく。その粘性に満ちた蜜を混ぜるように、その狭小な肉壁へと塗り込むようゆっくりと抽送を繰り返せば、ぬちりぬちりと音が漏れた。 彼女の尻のその柔い肉に腰を押し付けながら、深くを探るように揺らす。 「っつ…ぁ……ン…」 「駄目だ、声を出したら。聞こえるよ」 「…っ……ごめん、なさ…」 声にならぬ声で、はそう苦しげに呟く。胸元へ手を回し膨らみを手に収めると、ぷっくりと実ったその蕾を指先で摘み軽く力を込めた。弾くように、転がすようしてやれば彼女は深く息を吐き、その身体をまたきつく閉じようとする。 廊下を通り過ぎる足音や賑やかな声と混ざる、この淫靡な音と熱い吐息があまりに不似合いで、しかしそう意識するほど余計に高ぶる。どくどく脈打つ熱を彼女の身体へと何度も押し込みながら、快感は全身に弱い電気のように走り、堪らず低く声を漏らす。 「ん……はっ…」 「…隊長、も…声、…聞こえます」 「平気だよ。まさか誰も此処で起きている事を、想像出来る訳無いんだから」 「それは、そうかもしれませんが…私はさっき、怒られたのに…」 むっとしたように、彼女は僅かに顔を振り向かせる。こそこそと、小声で言葉を交わしながら、今はその囁くような声でさえ劣情を高めるものでしかない。音が響かぬよう、未だ制しながら腰をゆるりと揺らし、彼女の絡みつくような締め付けを味わう。 苦しげに声を漏らす彼女は、徐々に余裕が無い様子でびくびくと震え、きつく蜜口を窄める。何度か甘い快感の頂に達しているのか、時折その吐息は途切れ、項垂れる。何度もそう扱き上げられれば、やがて込み上げる吐精感を浮竹は何度か飲み下した。 しかし、絶え間なく蠢く彼女の肉壁に、とうとう堪らず深く押し込み震わせる。 「…ぁ…ふ、ッ……っく…い、く…っ」 「あ、ぁ……ン…っ、は…」 息を止め、深く穿ったその奥へと流し込む。腰を突き出し、まるで求めるようにびくびく揺れる彼女の腰を支えながら、望む通りにその全てを吐き終えるまで深く貫いた。弛緩と収縮を繰り返す彼女の体内の、柔い刺激が最後の一滴までを搾り取ろうと蠢く。 呼吸を整えるように、二人して深く息を繰り返しながらようやく落ち着いた頃、その身体からずるりと己を抜き出した。深く咥えこんでいた彼女のそこは、未だひくりと誘うように震えながら涎を垂らす。 その奥に飲み込んだ筈の欲では未だ満たされないのか、はまた振り返ると物欲しげな目で浮竹を見る。それが無意識であるのか、はたまた計算されたものか知らないが、少なくとも浮竹にとって効果が覿面であることには違いなかった。 未だ熱を持ち上向く雄を持て余していた浮竹に、彼女からの誘いに乗らない選択肢は無く、再びその蜜口を塞ぐように突端を宛がう。すぐにでも飲み込みそうなほどに蜜を漏らすその場所をへ焦らすように滑らせれば、彼女の身体はびくりと跳ねた。 何をしているのだ、年甲斐もなく。足音とにぎやかな声が響くこの状況に煽られている事には違いない。僅かに埋めれば、また込み上げる甘い痺れに息を漏らした。 「…小椿さん、迎えにきちゃいませんか」 「仙太郎には悪いが…その時はまた、一旦帰ってもらうしか無いな」 また誤魔化す事に胸は痛むだろうが、もう暫く長湯をしたいのだと伝えるほか無い。 だがまあ、ある意味長湯と言っても間違いにはならないだろう。甘い熱の心地よさに口元を歪めながら、その白い背を再び見下ろした。 君とぎくしゃくしたい 2022/04/24 （ラッキースケベ×昼間×密室 3単語リクエスト）